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2011年2 月24日 (木)

秋元康とつんくのショッピングモーライゼーション このエントリーをはてなブックマークに追加

希代のアイドルプロデューサー2人が、ほぼ同時にショッピングモールを描いていたので、忘れないうちにメモしておく。

AKB48の『Seventeen』は、主人公の「僕」が、故郷の町に帰る歌である。

 

僕が生まれて育った 海のそばのこの街
海のそばのこの街 久しぶりに帰ったら
ショッピングモールができてた

“僕”は、17歳のころの初恋の相手の実家をのぞきに行く。すると、かつては酒屋だったその店が、コンビニになってしまっている。しかも、レジに立っているのは初恋の相手自身。人づてに、彼女が結婚し、子どももいるということを聞く。スタイリストになりたいと言っていたあの子は、今では地元でコンビニを手伝っているのだ。

そういや『ふぞろいの林檎たち』にも、仲手川の実家がコンビニ化するしないともめる話があったっけ。この歌詞のつらさは、ちょっと山田太一っぽい。

だけど、主人公の“僕”は、「今でも君が一番だ」と感じている。ただし、思いを寄せるのは、卒業写真に映る「思い出の中 輝いている♪」彼女にである。変わってしまったロードサイドの景色に目をつぶり、変わらない「波の音」と「潮の香り」を感じているのだ。

この歌詞は少し変わっている。初恋相手のへの幻滅、故郷の喪失。こうしたモチーフは、ふつうならあの青春の日を想いながら、二度とそこへは戻れない大人になった自分の成長を描くものだ。だが、この主人公は現実に目をつぶり、卒業アルバムしか見ないのだ。ショッピングモールやコンビニに変わってしまった故郷の風景と一緒に、故郷は思い出の中に封印してしまう。現実を直視しないまま、主人公は生きていくのだろう。

 

つんくがプロデュースするアイドルグループ、スマイレージの『スキちゃん』もショッピングモールソングだ。

 

学校帰りの2人は、ショッピングモールでデートをしている。2人はフードコートに寄り道して、ペット売り場で、自分たちの将来の家や家族像を語る。

 

今日は最高 バイトもないし
フードコートで 寄り道ね

<中略>

ペット売り場で 犬を見てたら
話し出したね 将来を
二階建てとか 子供がどうとか
その家族には 私は「なれるかなぁ」

2人には、かつてショッピングモールができる前のこの街の風景の記憶はないのだ。生まれ育った故郷がショッピングモールであり、初恋は今目の前で起こっている現実である。

日本の地方に郊外型ショッピングモールが急増したのは`90年代のこと。コンビニが増えたのもほぼ同じ時期だ。秋元康(東京出身なのだけど)もつんくも、一回り違うとは言え、世代的には故郷の風景がショッピングモールに塗り替えられていったのを間近に見てきた世代に当たる。

それでも、2人がショッピングモールを描く目線は正反対だ。秋元は日本の地方都市の変化の前と後を比較しながら描く。つんくは変化が当たり前になった世代の感覚を描く。

両者の作家性が、ショッピングモールをモチーフとすることで、よく現れている。

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コメント

ichi234

SKE48の新曲『バンザイVenus』が「ショッピングモールで偶然見かけた憧れの子当たって砕けろ」みたいな歌詞なんですが、PVは商店街のアーケードなんですよね。PVは関わってないのかもしれませんがこの捻れみたいなものもおもしろかったです

ichi234

SKE48の新曲『バンザイVenus』が「ショッピングモールで偶然見かけた憧れの子当たって砕けろ」みたいな歌詞なんですが、PVは商店街のアーケードなんですよね。PVは関わってないのかもしれませんがこの捻れみたいなものもおもしろかったです

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