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2008年1 月25日 (金)

銚子電鉄と郊外化と都市計画 このエントリーをはてなブックマークに追加

がんばれ!銚子電鉄 ローカル鉄道とまちづくり
向後 功作
日経BP社 (2008/01/24)
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前社長の逮捕などで経営が行き詰まっていた銚子電鉄が、ネットで窮状を呼びかけたことで、副業のぬれせんべいが大ブレイクし、危機を脱するというのが、ちょうど1年ちょっと前に起こった事件。

この本はこのぬれせんべい事件とは一体何だったのかを、現場にいた銚子電鉄の社員の目からもう一度語り直される。


2ちゃんねるなどを通して「銚子電鉄を救おう」と全国からぬれせんべいの注文が殺到した物語は、それだけでいい話として読むことは可能だ。銚子電鉄の車両はどれも高度成長期の銀座線などで活躍したものであり、それらが第二の人生として銚子電鉄に引き取られ、のんびりと走っている。銚子電鉄を応援した人たちには、そんな車両と一緒に高度成長期の日本を支えた高齢の人たちも少なくなかったという話も本で取り上げられている。

一方で、この物語の肝は、地元の人たちには使われなくなった銚子電鉄を、インターネットやテレビでその窮状を知った遠方に住む人たちが救ったという部分にある。つまり、下北沢の再開発問題と一緒なのだ。地元が見捨てたも同然の鉄道を、遠方に済む人たちが、自分たちのノスタルジーで地方の一ローカル線を支援してしまうという問題をはらんでいる。

しかし、このほんの著者である向後さんは、それを無視して感動物語を記しているだけではない。ただ単に古いものを残せばいいというノスタルジーではなく、今後の銚子電鉄が生きる道を模索する。

そこで示されるひとつの解が、鉄道と地方再生の道筋だ。本書でも示されるとおり、ローカル鉄道が廃止に向かっているのは銚子電鉄に限った話ではなく、日本全国で起きている共通の現象である。その原因はモータリゼーション。単に交通機関が電車からクルマに移行したというだけでなく、クルマで移動することを前提とした形態に町が作り直されてしまったのだ。ロードサイドにショッピングセンターなどが建ち並ぶ「ファスト風土化」と呼ばれる郊外の光景がまさにそれ。

しかし、このモータリゼーションが産んだファスト風土はこれから間違いなく訪れる高齢社会には適していない。老人の自動車事故はすでに社会問題になりつつある。70代や80代の老人たちが住むのに適した町は、こういった自動車を必要とする広大な町ではなく、役所などの期間が町の中央集中し、公共の交通機関と徒歩で用が済む小さな町だ。これは「コンパクトシティ」という欧州で生まれたコンセプトで、すでに日本の一部でもこれを政策として導入している自治体もある。

このコンパクトシティで重要視されるのは、「都市計画・地域計画等で位置付けられ、都市内やその近郊で運行される中小規模の鉄軌道全般」の呼称であるライトレールだ。銚子の町はまさに高齢化が著しい地域であり、このコンパクトシティ化は今後の課題であり、そこで銚子電鉄がライトレールとして再び町の交通機関としての役割を得るというのが鉄道再生の道筋だ。

一線を引いた車両たちが、再び時代の流れで脚光を浴び、社会の役に立つという物語が実現すれば痛快だろう。ノスタルジーではなく、銚子電鉄が存続することの意義について考えることができる一冊。

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