飛行機嫌いの偉人伝 その1 デニス・ベルカンプ
【デニス・ニコラス・マリア・ベルカンプ Dennis Nicolas Maria Bergkamp】
かつて“空飛ぶオランダ人”の異名をとったのはヨハン・クライフである。その一方、“空飛ばぬオランダ人”と呼ばれるべきサッカー選手がいる。
その選手の名はデニス・ベルカンプ。イングランド・プレミアリーグ・アーセナルの所属選手として05/06年シーズンを最後に引退。`98フランスでのアルゼンチン戦、ゲーム終了間際にフランク・デ・ブールからの約50メートルのロングパスをぴたりとワントラップで止め、次のタッチでディフェンダーを交わし、右足で決めたゴールはこれまでのサッカー観戦歴のなかでも、最も興奮したゴール。
彼を“空飛ばぬ~”と呼んだのは、彼の“大の飛行機嫌い”に由来している。欧州の強豪チームでは、通常リーグ戦の合間にカップ戦で国外のチームと遠征試合をすることが多い。ベルカンプは他のチームメイトが飛行機で移動する中、クルマで10数時間かけて移動する。そして、遠征への帯同を拒否することも少なからずあった。
噂によるとアーセナルと交わしている契約の中に“飛行機での移動が必要な遠征の拒否認める”という項目があったという。多分本当の事だ。おかげで、ベルカンプ在籍時代、リーグでは常に上位を狙う位置につけていたアーセナルも、カップ戦の成績はいまいち奮わなかったのは、ベルカンプがいなかったからだろう。
このベルカンプの飛行機嫌いの理由には諸説ある。友人を飛行機事故で無くした説。もうひとつは、以前飛行機で爆弾テロ騒動に巻き込まれたというもの。真偽の程はわからないが、`94アメリカ大会では飛行機で大西洋を渡っているはずなのだ。飛行機嫌いはそれ以降の話なのかもしれない。
■代表引退の理由
ベルカンプは、2002年W杯予選を前に代表引退を宣言している。もちろんマスコミ(当然ファンも)は、その理由を“日本まで飛行機に乗って行くのが無理なせいだろう”と書きたてた。ベルカンプは、インタビューでそれを否定するコメントを出している。「俺はそんな理由で代表チームから引退す
るんじゃない。まだ俺が必要だって言うのなら日本でもどこでも行ってやるさ。飛行機嫌いなんか克服できるんだ」(出典は不明)。
しかしオランダ
は予選を勝ち抜くことができなかった。その原因のひとつはベルカンプが代表に戻ってこなかったから。
アーセナルファンも、オランダ人も皆、口をそろえて「ベルカンプが飛行機嫌いじゃなかったら今ごろ……」と思っていただろう。でも、それはディエゴ・マラドーナやエリック・カントナが人格者だったら……というのと同じ。飛行機嫌いとベルカンプという才能は、2つでひとつなのだ。
