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2012年1 月13日 (金)

日本の縮図としてみる箱根駅伝(のCM) このエントリーをはてなブックマークに追加

ほんと、皆好きだよね箱根駅伝。僕も実はここ数年欠かさず見るようになっている。箱根駅伝は、この国の新年のイベントで最も重要なもののひとつだ。

K-1にJリーグ、そしてプロ野球と相撲まで、長い歴史を持つさまざまなスポーツ中継の視聴率がふるわず、地上波の枠からずり落ちていく中で、圧倒的な強さを持って箱根駅伝は放送される。2日の往路で27.9%、3日の復路が28.5%。これは正月三箇日の全テレビ番組でトップの数字。

有名でもない大学生が箱根までの道を走るだけのレースになぜ? と思うが箱根駅伝は、日本社会の構造そのものだ。厳然と残る企業や官庁、公務員の学閥。また、一流大学の牙城に二流大、新興勢力が切り込もうとする図も、現実の企業社会の光景でもある(で、無力感に苛まれたり)。体育会系出身者たちが学生時代の先輩後輩を巡って仕事を取ってくることで成り立つ営業。箱根の山を競うレースに、日本の企業社会の縮図が編み込まれている。そうした日本社会の文脈が刻み込まれているイベントなので、ある程度それを共有する階層にしか楽しめないだろう。海外には輸出不可能なハイコンテクストコンテンツだ。

パチンコやケータイゲームのスポンサーしか入らない格闘技の中継なんかと違って、箱根駅伝のスポンサーは超豪華だ。ある程度、高い階層の視聴者層を見込めるので、引く手あまただろう。駅伝が日本の企業社会の縮図なら、箱根駅伝のCMは日本経済の縮図である。

メインスポンサーはサッポロビール。あと、トヨタやホンダといった自動車メーカーが続くが、中でも圧倒的に目につくのがマンションデベロッパー各社のCMである。三菱地所レジデンス、三井不動産レジデンス、野村不動産、明和地所、ゴールドクレスト、大和ハウス……etc。

個々のCMに目を配ると、最もわかりやすくゴージャス感を売りにしているのが、野村不動産のプラウドのCMだ。

Proud

ロケ地はマリーアントワネットやナポレオンも使用した「フォンテーヌブロー宮殿」。世界遺産だそうだ。BGMは、ガーシュインの『Someone To Watch Over Me』を平原綾香がスキャットで歌う。このご時世に、これだけ贅沢を尽くす趣旨のCMが作られるのはむしろ爽快だ。

一方、外観のゴージャスではなく、生活のぜいたくさをアピールするのが三菱地所である。CMソングは、竹内まりやのヒット曲『家に帰ろう(マイ・スイート・ホーム)』。

Mitubisi

恋するには遅すぎると 言われる私でも 遠いあの日に 迷い込みたい気分になるのよ♪



CMはこちら→ http://www.mecsumai.com/cm

このCM及びCMソングからは、彼らが商品を売りたいと考えているターゲット層が見えてくる。この歌の主人公は、すでに恋する年齢を超えているのだという。つまり既婚者。子育ても一段落し、生活が落ち着いた主婦を題材にした歌だ。ちなみにこの曲は、20年前のヒット曲だ。これを作った当時の竹内まりやは30代半ば。

『家に帰ろう』と歌うこの歌の主人公家族が住む“家”は、多分、一軒家なのだろう。子どもができて郊外の広めの家に引っ越したのだ。もちろん、35年ローンで購入したのである。

あれから20年。竹内まりやも今年で57才である。

さて、30代半ばだった歌の主人公の主婦も、同じくもう60才に近づいている。ローンも繰り上げ返済でそろそろ返し終えている頃だろう。子どももとっくに独り立ちしている。そろそろ老後の暮らしをどうするかに思いを巡らす年代だ。老後の生活は、都心のマンション暮らしが便利かな、なんて。

そんな人々が、どれだけいるのかはわからないが、このCMが狙うターゲット層は、そんな人々だろう。そこを見据えて、いまこの歌をCMソングに採用したのだろう。

実際うちの親なんかは、このCMのターゲットでもおかしくない状況を迎えているし、それを消費してもおかしくない社会階層といっていい。

正月のCMからそんなことが突きつけられた。この国の金融資産の約8割を、50代以上が保有しているのだから仕方ない。箱根を必死の形相で駆けていく若者たちと、高齢者をターゲットにしたゴージャスなマンションのCM群。この国の縮図がまさに箱根駅伝には詰め込まれているのだ。



著書

about::フリーランス編集者・ライターの速水健朗のブログ。ディスコや歌謡曲などについて。

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