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2011年7 月 1日 (金)

女子会の原風景とビールと森高千里 このエントリーをはてなブックマークに追加

去年辺りから居酒屋が「女子会プラン」の提案がヒットするようになり、それ以降ホテルや旅行会社など他分野もこのマーケットに参入するようになっている。日経MJを読んでいると、「ポスト女子会プラン」的なサービスプランの記事は、クールビズ関連、ジョギング関連のサービス同様よく目にする。

 

飲もう 今日はとことん盛り上がろう
聞かせてよ 彼との出会い
遠慮せず 飲もう 今日はとことん付き合うわよ
私もさ 好きだったんだから
(『気分爽快』作詞:森高千里) 

という森高千里の『気分爽快』(`94年)は、題名どおりさわやかな曲調で、当時通信カラオケが登場して間もない時代のカラオケボックスにて、OL同志で憂さ晴らしに歌われる際の定番曲になっていた。

この曲のシチュエーションを説明すると、同じ男を好きになった女同士。その2人は友だち同士でもある。主人公はその男にふられたようだが、その友だ ちは男を見事に射止め、明日はその男とデートだという。 同じ男を奪い合ったにもかかわらず、この2人の友情は崩れない。それどころか2人でビールを片手に乾杯をしている。主人公は「不思議だね 気分爽快だよ ♪」と精一杯強がってさばけたところをみせる。そして、とことんそいつの話で盛り上がろうというのだ。この2人は、恋より互いの友情を優先する間柄なの だ。

この曲は上の動画でもわかるようにCMタイアップ曲。まさにその商品に合わせて歌詞が書かれているからビールなのだ。

この曲は、`94年にアサヒビールがスーパードライに次ぐ若者向け定番銘柄として発売した“Z”のCMソングだった。かつて、スーパードライのCM では国際ジャーナリストの落合信彦を起用し、“世界を飛び回る男の辛口ビール”というイメージと商品を結びつけることに成功した。この新ブランドは、日本 一のビールブランドとして定着する。

続く“Z”でアサヒは、居酒屋でビールを酌み交わす女の友情物語を歌にして、女同士でビールという新たな消費の在り方を提案したのだ。当時、飽和と 言われていたビール市場に新しい消費層を拡大する必要があった。そこで、ビール=男の飲みものというイメージを払拭し、若い女性層をビールのユーザーに仕 立て上げようという掘り下げをアサヒビールは行なう。それが、この森高の歌であり、それを使ったCMだった。

今となっては陳腐に見えるかもしれないけど、実は学生くらいの若者同士がビールを飲んで盛り上がる光景というのだって、せいぜい80年代くらいに生 まれた習慣でしかない。それを若い女性層にまで浸透させようというのは、結構大胆な目論見だったように記憶している。少なくとも現代から想像する以上に は。

一方、この当時は第二次居酒屋ブームと呼ばれ、和民のような女性客を取り込もうと、フードメニューに力を入れる居酒屋がやっと出てきた時期でもあった。つまり業界全体で女性をターゲットにし始めていたのである。

いまでは当たり前の女子会的光景とは、このころにようやくビール会社の発想として登場してきたものであり、定着するまでには結構な時間がかかったように思う。

それが当たり前になったという功績の一端は、この歌を歌った森高にある。当時のカラオケでこの曲が歌われる機会は多かったし、少なくとも女の子と ビールを結びつけた功績の一端は森高にある。 だが、メーカーとしては肝心の新製品「アサヒZ」はドライに次ぐアサヒの定番ビールブランドとしては定着しなかった。3年後に生産中止になる。

新しい消費層と「女子会」へとつながる新たなライフスタイルの発掘には成功したが、個別商品の魅力訴求には失敗したのである。アーメン。

 

著書

about::フリーランス編集者・ライターの速水健朗のブログ。ディスコや歌謡曲などについて。

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