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2011年4 月15日 (金)

人口減少社会の赤ちゃんソング このエントリーをはてなブックマークに追加

国土交通省が「国土の長期展望」という報告において、2050年までに日本の総人口が、現在の25パーセントに減る可能性を指摘した。この国の将来を考える上で、人口減は避けては通れない障壁だ。

2年ほど前に妊娠ヌード写真を発表して話題を集めたhitomiが、やはり2年ぶりとなるシングル『生まれてくれてありがとう』を発表した。題名通り、生まれた赤ちゃんに感謝する歌である。

あなたが笑うと 幸せになる あなたが泣くと 悲しくなるの
いつもオロオロ だめなママごめんね ごめんね こんなママ
サンキュー マイベイビー サンキュー マイベイビー
生まれてくれてありがとう

あなたの未来は日本の未来 あなたの未来は世界の未来
愛するあなたにもう一度

赤ちゃんソングと言えば、ミリオンセラーを記録した1963年の梓みちよ『こんにちは赤ちゃん』があった。あれから半世紀が経っても、母親になること、赤ちゃんが生まれることの喜びは変わらないだろう。その感触は、歌の歌詞からも伝わってくる。だが、生まれる赤ちゃんが置かれた位置には少し変化が生じたかも知れない。

まだまだ日本の総人口は急速に伸び、高度経済成長期ど真ん中の時代に歌われた『こんにちは赤ちゃん』では、「こんにちは 赤ちゃん あなたの未来に♪」と、赤ちゃん自らの未来が祝福されているが、hitomiの『生まれてくれてありがとう』では、「あなたの未来は日本の未来♪」と、赤ちゃんの側に日本という国家の未来が託されるているのだ。

伊藤計劃の『ハーモニー』という小説がある。その舞台は、人口減の末、子どもを極端に大事にするようになった未来の社会だ。子どもは社会のリソース(公的資産)であり、科学技術によって怪我や病気から守られ、自殺も許されない。人口が急速な減少期に入り、極端な少子化が過剰保護、過剰監視の社会を生み、子育てが母親から取り上げられ、社会が引き受けることになる。オルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』などでは、赤ちゃんがオートメーション化で大量生産されるため、子育てと教育は社会が行うものになっていたが、それとは正反対の理由によって子育てが社会化された世界。

社会が子育てを引き受ける状態というのは、福祉国家の目指す正しい道だが、それが行き過ぎるとSF的なディストピアになる。hitomiの『生まれてくれてありがとう』は、ほんのちょっとではあるが、そっちの方向に半歩踏み出している感がある。

一時は過去の人となっていたhitomiだが、妊婦となり、さらに母となることで、その立ち位置とターゲットをシフトしていくことで復活を遂げつつある。その背景には、ちょっとした人口減少社会の価値観の変化を見事に見いだし、マーケティングの舵取りを行った跡が見える気がする。ほぼ間違いない。米軍情報。

 

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