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2010年3 月12日 (金)

コリー・ハイムと1980年代の青春映画と『シャコタン☆ブギ』 このエントリーをはてなブックマークに追加

コリー・ハイムが亡くなったそうだ。まだ38歳だった。

10代で映画デビューし、「ルーカスの初恋メモリー」「ロストボーイ」など80年代の作品の少年役で活躍。近年、薬物乱用歴を大衆紙などで告白して注目を集めた。コリー・ハイム氏死去 カナダ出身の俳優(共同通信)

僕は中学高校時代にはよく1人でアメリカのハイスクールもの青春映画を観に行っていた。コリー・ハイムとコリー・フェルドマンが共演した『運転免許証』(1988)という映画と、『フェリスはある朝突然に』(1986)は、当時とても好きな作品だった。前者はDVD化されてないので、15歳の時に見たきりではあるけど。

『フェリス~』の主役マシュー・ブロデリックは、先週のアカデミー賞授賞式に、ジョン・フューズの追悼枠で登場していて、ふけたなあと思ったらなんと47歳。フェリスのころがもう20代半ばだったと知って驚いた。

さて、この両映画、どちらもハイスクールライフと自動車という、アメリカの青春映画の二大定番アイテムが描かれる。『運転免許証』は、免許試験に落ちた高校生の2人が、コリー・ハイムのおじいちゃんのキャデラックを拝借してガールフレンドとデートに行く話。『フェリスはある朝突然に』は、お調子者のフェリスが、学校をさぼって父親の自慢の古いフェラーリを拝借し、ガールフレンドとナード風の友人とシカゴの都心に遊びに行く話。

どちらの作品にも共通するのは、
1,大人とは大切な車を所有しているものである
2,それをかすめ取って乗ることが少年の試練である
3,そして、その目的は、ガールフレンドとのデートである

という点。少年が大人になるための儀式、通過儀礼として自動車を盗む。ちなみに、この視点を逆転させて、大切な車を盗まれそうになる大人の立場というのを描くと『グラントリノ』になる。

一方、1980年代の日本で始まった漫画が『シャコタン☆ブギ』(1986~)である。高校の先輩後輩の関係であるハジメとコージ。ダブりの高校生で、免許を持っているハジメが、ソアラを買うところから物語は始まる。ソアラは、値段も高いラグジュアリーカーとして登場したが、むしろ当時の若者たちの間で売れたクルマだった。しかも、走り屋系、ナンパ系の両者に人気があった。その高級車を、ハジメは、「高校出たら本気で百姓する」と親をだまして買ってもらったのだ。

主人公2人が、このソアラを駆ってナンパに出かけ、恐い不良たちにからまれるというのが、この漫画の基本線。絵を見ずに、プロットだけを取り出してみると、80年代のアメリカのハイスクールものの定番とよく似ていることがわかる。『シャコタン☆ブギ』第1話の冒頭、コージが原動機付き二輪に乗ってやってくるが、これは『アメリカン・グラフティ』(1973)の冒頭を意識しているのかもしれない。めちゃめちゃ日本的、超ドメスティックなクルマ好きの若者たちの世界を描いたように見える本作も、実はアメリカ青春映画を下敷きにしていたのだと思う。

アメリカだけでなく、日本でも自動車を巡る青春ものが作られるようになったのが1980年代という時代である。そのころの両国の自動車産業は、真正面からぶつかっていた。日米貿易摩擦の時代である。2度のオイルショック、イラン革命を経て、ガソリンが高騰。でかくて燃費の悪いアメリカ車の時代から、小型で燃費がいい日本車の時代になりつつあった。デトロイトを始め、米の自動車産業は空洞化し、日本車がたたき壊される映像などを見たのを覚えている。こうしたジャパンバッシングを受け、日本の自動車産業は積極的に米の現地工場での生産を始めるようになっていった。

ちなみに、先日休刊した『NAVI』が創刊されたのも1984年のこと。いまどきは、若者のクルマ離れが囁かれるようになってもう久しい。青春と自動車は、もう結びつかないものになり、雑誌などで、「隣に乗せてドライブしたい女性タレントは?」みたいなアンケート項目を立てても、もう成立しないのだろう。そんな日本とはうって変わって、いまどきは、インドや中国で、自動車が登場する青春映画なんかが作られていたりするかもしれない。

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