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2009年12 月15日 (火)

コーヒーと恋愛、及びその受容とたまにイノベーション このエントリーをはてなブックマークに追加

恋は 私の恋は 空を染めて燃えたよ
夜明けのコーヒー ふたりで飲もうと
あの人が言った 恋の季節よ

『恋の季節』作詞:岩谷時子

決定版 今陽子とピンキーとキラーズ

ピンキーとキラーズのデビュー曲『恋の季節』には、「夜明けのコーヒー」という歌詞が登場する。男は口説き文句として「夜明けのコーヒー」を一緒に飲もうと女を誘う。喫茶店のモーニングに誘っているわけではない。朝まで部屋で一緒に過ごそうという大人の口説き文句だ。
ピンキラは`68年にボサノバを歌うグループとしてこの曲でデビュー。もしかしたら、コーヒーが登場するのはボサノバ=ブラジルのつながりもあるのかもしれない。

この歌詞からはカップルが飲んだコーヒーがドリップ式なのかインスタントだったのかの推測は出来ないのだが、きっと後者である。なぜなら、この曲は発売される前年に、インスタントコーヒー界における革命『ネスカフェ・ゴールドブレンド』が日本で発売されていたからだ。

フリーズドライ製法を使った本格的なインスタントコーヒーの皮切りがこの『ネスカフェ・ゴールドブレンド』だった。「違いがわかる男の」というキャッチコピーと“ダバダ~♪”のCMソングは「目覚め―ネスカフェ・ゴールドブレンドのテーマ」長きに渡って使われているので、知らない人はいないだろう。

常にコピーとともにコーヒーにうるさいイメージの文化人を毎年起用するこのCMの初代は映画監督の松山善三で、遠藤周作や北杜夫も出演。ただし、「違いがわかる男の」というコピーは、現在「違いを楽しむ人の」に変わっている。ただし、このシリーズで最初に起用された女性は版画家の山本容子で、シリーズ開始から29年目の1999年のこと。

さて、『恋の季節』からちょうど30年後にあたる、1998年。モーニング娘。は『モーニングコーヒー』でデビューする。そのデビュー曲にも、コーヒーが題材として取り上げられている。

ねえ はずかしいわ (ドキドキ)
ねえ うれしいのよ (してる)
あなたの言葉
「モーニングコーヒー飲もうよ 二人で」
(Yes) 門限どおりに
(Yes) うちに送ってくれる
(Yes) 私より弱虫ね
(Stop) 時間が来るまで
(Stop) ぐるぐると遠回り
(Stop) くちづけも出来ない人

叱られたって かまわない
あなたについてゆくと決めた
なのに 急じゃ (こわい)

『モーニングコーヒー』作詞:つんく
モーニングコーヒー

しかも、ここで描かれるのも、“モーニングコーヒー飲もうよ 二人で”という、男からの口説き文句である。この男は、普段彼女“門限どおり”に送って届けるまじめな男のようだ。そんな彼に突然大胆な告白をされ、ドキドキする女の子の心模様が歌われる。

門限がある実家暮らしの女の子で、「叱られたって かまわない」というくらいなのだから、ここでのモーニングコーヒーは、外である。ホテルからの初めての朝帰りというシチュエーションなのだろうか。

そうだとしたら、この2人が飲んだモーニングコーヒーは、まだ当時、シアトルから上陸して間もないスターバックスコーヒーだった可能性がある。スタバの日本進出は`96年。銀座が1号店だった。そして、この曲が発売された98年から99年にかけて国内の店舗数を18から52店舗へと急増させている。そこからスターバックスは、あっという間に普及していった。

コーヒーの進化・イノベーションは、歌謡曲の恋愛の場面において、さりげなく登場し、ある種の役割を果たしているのだ。

さらに、ピンキーとキラーズとモーニング娘。の両デビュー曲のちょうど中間にあたる1983年。尾崎豊のデビュー曲『15の夜』に登場するのは“缶コーヒー”だ。

冷たい風 冷えた躰 人恋しくて
夢見てるあの娘の家の横を サヨナラつぶやき走り抜ける
闇の中 ぽつんと光る 自動販売機
100円玉で買えるぬくもり 熱い缶コーヒー握りしめ
恋の結末も解らないけど
あの娘と俺は将来さえ ずっと夢に見てる

『15の夜』作詞:尾崎豊

卒業/15の夜

15歳の少年が夜中に家出を敢行する。そして、(おそらくは)片思いの少女の家の前を通り「サヨナラ」と独りつぶやく。周囲は真っ暗だが、少年はぽつんと光る自販機を見つける。
「100円玉で買えるぬくもり 熱い缶コーヒー握りしめ♪」と続く。

少年の不安な心は缶コーヒーによって暖められる。はかないその場限りのぬくもりであることが、「100円玉で買えるぬくもり」という歌詞で表現される。15才にとっての缶コーヒーとは、ちょっぴり大人への背伸びという感情も込められているのだろう。

これを`65年生まれの尾崎の15才の頃の体験と仮定するなら、舞台設定は1980年ということになる。当時はまだコンビニも少なかった時代である。セブンイレブンの店舗数でいうと、現在の32分の1程度。外が寒いからといって、コンビニに寄っておでんでも買おうかという時代ではないのだ。

自動販売機に缶コーヒーが登場したのは1969年のこと。3年後の1972年にはホット用の自販機も登場している。しかし、缶コーヒー史における最大のイノベーションは、1976年に登場した「ホットアンドコールド自動販売機」だろう。この機種の登場以後、冷たい缶ジュースと温かい缶コーヒーを一緒に販売できるようになり、缶コーヒーは急速に普及することになった。

寒い夜に一人で家出する尾崎の孤独を暖めた缶コーヒーは、こんな技術革新を背景にしたものだったのだ。

ちなみに、缶飲料の価格が110円になったのは、尾崎が死んだ`92年のこと。100円玉1枚では温もりすらも買えない時代は、ここから始まったのである。

続く(かな?)

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コメント

kaoruo

とても面白かったです。続きを楽しみにしています。

ゆでめん

タイトルを見て、サニーデイ・サービスの「コーヒーと恋愛」という曲かなあと思ってしまいました。

下北沢の喫茶店でのシーン。
こちらは営業時間内、昼間の恋愛風景ですね。

kenzee

Twitterの仕組みをイマイチわかっていないkenzeeと申します。
いつも拙ブログご愛読ありがとうございます。
映画「県警対組織暴力」は「仁義なき」同様、監督深作、脚本笠原和夫による75年作品です。深作が1930年、笠原が1927年生まれということで二人とも軍国教育を受けてはいるのだが、この時の3つ違いというのは感受性に大きな差異を及ぼしたようです。
例の「県警」におけるラブホテル篭城のシーンですが、終戦時にすでに18歳だった笠原は男の戦い方としての無様さ、惨めさを表現したつもりであった。だが、終戦時15歳だった深作的には篭城のシーンはやはりあさま山荘を連想していたようで「滅びの美学」的な意味を見出していたようです。(て確か笠原「破滅の美学」幻冬舎文庫に書いてあった)フツーこの世代の「負け」は文字通りの「負け」なのだが、深作は「負け」にロマンを感じるメンタリティを持ち合わせていた。このことが彼を90年代末まで現役性を保たせる力となったのではないか。「仁義なき戦い・広島死闘篇」における
千葉真一演じる大友勝利の描き方にも両者の間ですれ違いがあったようです。深作は勝利のイケイケっぷりを「カッコいいもの」として描いた。深作とはまさに「戦後」の表現者だったのだなあ。速水さんはあさま山荘を訪ねたことがあるんですよね。スゴイなあ。
来年はハーレクイン本でしょうか? 楽しみだなあ。それでは来年もウチのアレをよろしく御願いします。

rcn

「コーヒー」をお題に、三つの時代それぞれを代表するヒット曲をつなげてみせるアクロバット的手腕、お見事ですね!

イーペーコー


この前見つけた副業
http://toe.comoscomos.com/2-p0bdh/
最近、本業が忙しくて放置してたら
女がバイブでオナってる写メ送ってきやがるし!
昨日ついに我慢できなくなって朝まで生ファックやっちった!!
おかげで今日めちゃ寝不足だっつの。。。笑

独身男

コーヒーの見方が変わりました。

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about::フリーランス編集者・ライターの速水健朗のブログ。ディスコや歌謡曲などについて。

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