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2008年8 月30日 (土)

哀しい大人になってしまった…夏 このエントリーをはてなブックマークに追加

 稲垣潤一『思い出のビーチクラブ』、杏里『最後のサーフホリデー』は、`87~`88年のカナダドライ・ジンジャーエールの87年,88年のCMソング。バブル真っ盛りの夏。

清涼飲料水のCMで言うと、コカ・コーラがこの分野の歴史を作ってきたのだけど、コカ・コーラはわりと日本の夏とコカ・コーラという和風路線。逆に、わかりやすく、夏、リゾート、恋という路線を打ち出していたカナダドライは、ちょっと大人な感じのアーティストを使ったCM展開をしていた。

ちなみに、1987年は“総合保養地域整備法”、つまり通称リゾート法が制定された年でもある。
当時中学生だった僕は大学生になったらリゾートに行って、「避暑地の恋」をするんだと、胸をときめかせていたものだった。まさか、自分が大学に入った頃にバブルが弾けるとは露知らず。いや、それよりもっと致命的だったのは、三流大学にしか入れなかったことだったのだが。

稲垣潤一の『思い出のビーチクラブ』は、作詩:売野雅勇 作曲:林哲司と、最強のシティポップを生み出すことで知られる、僕のフェイバリットチームでもある。

切なさ残して避暑地の夢が
醒めれば哀しい大人になってた
青春のボートが流されてゆくね

かつての若い日の避暑地の恋を、大人になった今の視点から思い返しているという感傷的な夏の歌。同じカナダドライのCMソングだからなのか、杏里の『最後のサーフホリデー』も、リゾート地でのひと夏の恋という共通のモチーフを歌詞にしている。

ふたり恋人がいること隠して
星の砂浜でキスしたね あの日

騒いでたビーチには もう誰もいないよ
ありふれた避暑地の恋は
素肌から消してゆく

こちらは、作詞:吉元由美、作曲:杏里というチーム。この曲の歌詞にも「 きわどい恋なんて
知らないフリをして 淋しい大人にね なってゆくの」という部分がある。

どちらも夏の日の短い恋を回想する歌であり、あの頃と違って「哀しい大人」(『思い出のビーチクラブ』)「淋しい大人」(『最後のサーフホリデー』)になっ てしまったと、今の自分を嘆いている。

こういった避暑地型アバンチュールのことは、当時「リゾラバ」と読ばれていた。同時代のヒット曲である杉山清貴とオメガトライブ『ふたりの夏物語』や渡辺満里奈『マリーナの夏』も、このリゾラバが描かれていて、最後にはやっぱり大人になってしまった自分が過去を振り返る構造になっていた。

 

“青春が終わって、あのころにはもう戻れない私”というのがリゾラバの立ち位置だとすると、リゾラバ歌謡は、人間の“成熟”を描いていたのだ。

90年代になってバブルが弾け、日本各地の建築中だったリゾート開発予定地が放置されるようになると、同時にリゾート地の恋なんて歌も流行らなくなる。「リゾート開発」がなくなったように「アバンチュール」も「リゾラバ」も、いまや、死語。あまり声に出して読みたくない日本語の類である。いや、そもそも日本語じゃない。

先日、TBS系『CDTV』で夏の思い出の曲ランキングを公開していたが、ここで取り上げられた90年代以降のサマーソングには、やっぱいリゾラバは皆無だった。“あの夏に置いてきた、過ぎ去った避暑地の恋”的な感傷は、もう単純にはやらなくなったのだろう。

例えば、そのランキングで上位に入ったゆず『夏色』は、90年代を代表する夏の歌のひとつ。この歌は、「君」に海を見せるために自転車で二人乗りをして走っていくという内容である。なんとも牧歌的な曲で、カナダドライのCMが大好きだった僕から観ると、遠くに来てしまった感がある。

っていうようなテキストを書きながら、明日のドライブ用に懐かしいリゾートソングのプレイリストを浮き浮きと作っているのだけど、どうも外はどしゃぶりの雷雨で、夏が完全に終わってるんですけどそれはどうなの。

関連:
リゾートポップス考その1
リゾートポップと沖縄観光キャンペーン

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