『タモリの戦後日本歌謡史』について
『タイアップの歌謡史』という本を書くに当たって、いろいろな日本の歌謡史や和製ロック史に目を通したのだけど(というかその手の通史を書いた本が軒並みすべて広告・タイアップ音楽としての歴史という視点を欠いていたから書いた本でもある)、その中でも特に秀逸だったのが『タモリの戦後日本歌謡史』。
『タモリの戦後日本歌謡史』というのは、『タモリ3』というLPレコードとして発売されたもので、中身を説明すると、
戦後最初のヒット曲「リンゴの唄」に始まり、
78年当時の最大の人気歌手、
山口百恵までの歌謡曲のヒット30数曲を、
全部‘パロディー’にしてタモリに歌わせ、
その曲間を、大橋巨泉やら、竹村健一やら、
東北から集団就職でやって来た名もない一青年、
などに扮したタモリが、もっともらしく、
そのヒット当時の世相を語る、
というもの。すべてが「パロディー」なので、歌詞や題名がピンカラ・レディー『USO』といったように変えられてはいるものの批評性の高さもあり、偽史としてもかなり秀逸。
これの歴史解釈によると、
『バラが咲いた』(マイク真木)→『ハラをさいた』
「この唄に感化されて、
作家木島由紀夫(三島由紀夫)は、
ハラをさいたのです。」
ということになる(笑)。ちなみに、曲目リストはこちらにある。
http://homepage2.nifty.com/arumukos/unnk/unncssry/tmr/index.html
ちなみに上のコンセプトはこちらより引用させていただいた。なんと、このブログを書いているのはアルファ・レコードでこのレコードを担当していたディレクターの宮住氏のブログ! 当時、このレコードが問題作として世に出てすぐにお蔵入りとなり、一時は署名運動で復活するも、各老舗レコード会社から「重大な名誉毀損」と猛抗議を受けた~といったような経緯が事細かに書かれている。このブログは必読。すごい時代になったもんだ。
俺もずいぶんパロディをやったけど、
こんなスゴイことをやられたら、
もうお手上げだよ。(笑)
これを世に出せないなんておかしい。
いざとなったら俺も一緒に戦うから。
とは、当時、宮住氏が大瀧詠一氏から受けた言葉。これだけでも『タモリの戦後日本歌謡史』のレベルの高さがわかるはず。
さて、僕が『タイアップの歌謡史』を書く上で、もっとも中心になった重要な曲が矢沢永吉の『時間よ止まれ』だった。これはソロになった矢沢の転換となった曲で、資生堂のCMソング。当時のCM映像がYouTubeにあった。曲を知らない人はとにかく名曲だから、まず聞いて欲しい。
この曲のクレジットを書き出すと、エンジニア:吉野金次。坂本龍一(KEY)、後藤次利(B)、高橋幸宏(DR)、斉藤ノブ(PER)、木原敏夫(FG)、相沢行夫(G)というメンツ。演奏のレベルが高いのも納得。
さらに大事なのはこの曲のプロデューサー&ディレクターが大森昭男であること。大森はONアソシエイトを立ち上げ、大瀧詠一や山下達郎らを広告音楽の世界に巻き込んだこの世界の最重要人物。
また、この曲のタイトルやイメージは“南大西洋裸足の旅”という電通の藤岡和賀夫が仕掛けたイベントツアーから生まれており、この曲だけでなく、ジュデイ・オング『魅せられて』(ワコールのイメージソング)や山口百恵『いい日旅立ち』(国鉄のキャンペーンソング)も産まれた。
『時間よ止まれ』の周辺を調べていくことで、この時代の音楽シーンが見えてくるという重要なポジションの曲。
先の『タモリの戦後日本歌謡史』でもこの曲のパロディを行っている。
♪次の 奴は ア~エロティック
若く揺れる胸 丸出しでかまわない
時間よ どなれ 20歳の自前の金で
Mm-Strip The best『時間よどなれ』矢沢平吉
曲の前には“テレビコマーシャルで流れることでロックのレコードも売れるようになっていく”という解説が入り、後にはタモリによる「ヤザワ」の物まねで「金は力」というテーマの演説が入る。まあ、早い話がこの部分が『タイアップの歌謡史』の生みの親とでもいうべき部分なのだ。
12月にタモリの一連のアルバムが再発されるというが、もちろん問題作の『タモリの戦後日本歌謡史』だけはされない。なんとかならないのかなあ。まあYouTubeさんには頭が上がりませんが。

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