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2007年5 月29日 (火)

黒人と鉄道 その2 このエントリーをはてなブックマークに追加

Gospeltrain 前回は黒人音楽に列車がよく出てくる理由を、食料を運んできた汽車のイメージ、ファミリー感というふたつで説明したが、今回は3つ目の、黒人の宗教観と汽車というテーマ。

その前に19世紀、奴隷解放以前の時代にあった“地下鉄道”について少し。これは実際の鉄道の話ではなく、南部の奴隷たちをこっそりカナダへと送り込む、奴隷制廃止論者たちがつくったネットワークのこと。

実際には組織の用意した隠れ家を転々と移動しながら逃亡するというもので、彼ら地下組織の隠語として鉄道用語が使われていたようだ。例えば隠れ家は“ステーション”、運ぶ黒人は“パッセンジャー”といった具合。

 

奴隷を逃がす話の原型は、旧約聖書の中ににある。“創世記”に続く“出エジプト記”だ。これはエジプトの奴隷であったユダヤ人をモーゼが率いて約束の地カナンへ向かう物語。途中、海が割れたりすることで有名なあれ。僕もアメリカのユニバーサルスタジオで割れた水の中に入っていくライドに乗ったことがある。

黒人たちは自分たちの境遇に似たユダヤ民族の歴史にシンパシーを持ったといわれ、黒人たちが唄ったブラックゴスペル(黒人聖歌)には。この出エジプト記を元ネタにしたものが多いようだ(参照)。

ちょっとだけ黒人とキリスト教という関連に触れると、アメリカに連れてこられた黒人たちを、従順に飼い慣らすためにキリスト教を押しつけたというのは獄中でイスラムに改宗したマルコムXなどがよくいう主張ではあるが、黒人だってそんなに従順だったわけでもない。

文字の読めない彼らが、歌という形で聖書の物語を広めたのがブラックゴスペルの始まりと言われるが、そこには表面的には聖書や神の物語を唄いながらも、白人への悪口とのダブルミーニングが込められ、白人へのはけ口としても機能していた。また、黒人たちは都合のよい教義や、自分たちの理解できる物語を受け入れた。

そんな好まれた教えの中から、いつか救い主が現れて、自分たちを解放してくれるというユダヤのメシアイズムを歌ったもの、死後に罪は洗い流され、魂が救われて真の自由が訪れるというものが愛され、それらをモチーフとしたゴスペルソングが多く現れる。

ゴスペル・トレイン・イズ・カミング

ゴスペルソングの常套句に、『ゴスペル・トレイン』というフレーズがある。これは天国行きの汽車のこと。この題名でiTMSで検索するといろんな楽曲、バージョンを見つけることができる。

ピープル・ゲット・レディ

このゴスペルトレインの流れを汲んでいるのが、カーティス・メイフィールド&インプレッションズの代表曲『People Get Ready』。僕はカーティスの名前も知らない頃からこの曲は知っていた。白人の歌手も大勢歌っている。僕が最初に知ったバージョンは、かつての僕のアイドルだったロッド・スチュアートのもの。

この曲は1965年に発表されているから、公民権運動の真っ直中の時代。同年にマルコムXが暗殺され、前年に公民権法が制定、その前年がワシントン大行進とマーティン・ルーサー・キングの有名な「I have a dream」の演説の年。カーティスの母はゴスペル・シンガーで、少年時代から大きな影響を受けていた。

People get ready, there's a train coming
用意はいいか 汽車が来た

You don't need no baggage, you just get on board
荷物なんていらない 乗り込もうぜ

All you need is faith to hear the diesels humming
機関車の音を聞いているだけでいい

You don't need no ticket no no you just thank the lord
切符はいらない 神に感謝して

People get ready, there's a train to Jordan
用意はいいか ヨルダン行きの汽車が来た

「ヨルダン行きの汽車」のヨルダンとは、エルサレムの近くを流れるヨルダン川のこと。これは前出の旧約聖書の出エジプト記に登場する場所。約束の地はヨルダン川の西にある。ちなみに、この約束の地と自分を隔てるヨルダン川は、ゴスペルの中ではミシシッピに例えられることが多いようだ。

ミシシッピで思い出したけど、僕が最初に黒人や奴隷というものを知ったのは、小学校に入る頃に放映していたハウス名作劇場の「トム・ソーヤーの冒険」だった。このエンディング曲;「ぼくのミシシッピ」はデルタブルースの名曲(真に受けないように)。

きっといつかぼくもいくよ
きみがめざすうみへ
そしてきみにまけないくらい
とおくたびをするんだ

この曲を聴くと、僕の心にいまもミシシッピが流れているということを実感する。

マーク・トゥエインの『ハックルベリー・フィンの冒険』には、ハックが逃亡奴隷をかくまい、筏でミシシッピを下るエピソードも登場する。

黒人と鉄道のトピック、多分その3も書くと思う。

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