« 鉄道音楽史におけるもっとも重要な年 | メイン | 80年代アイドル・レアグルーブ・コレクションその1 »

2007年5 月11日 (金)

黒人と鉄道 その1 このエントリーをはてなブックマークに追加

Railroad_2

黒人音楽ファンは多いし、それ以上に鉄道ファンも多いだろうが、黒人鉄道音楽ファン(命名:黒鉄ファン)となるとどれくらいいるのだろうか? 途端に少なくなりそうだ。しかし、“黒人”と“鉄道”はものすごく深く密接につながっている。

ちょっと長くなるけど、その辺の話をまとめてみたい。

Soultrainおいおい紹介していくけど、黒人音楽には鉄道、汽車、電車がモチーフになっている曲がたくさんある。

その理由のひとつが、黒人にとって汽車は“幸せを運んでくる乗り物”というイメージがあるという話を聞いたことがある。かつて、汽車は貧しかった黒人居住地に食料を運んでくる恵みの存在だった時代があったのだという。それが幸せのイメージにつながり、歌になったというのがひとつ。

また、列車は大勢が乗り合わせる乗り物。男も女も家族もご近所さんも、知らない人もみんなを乗せて走っていくぜ的な高揚感があるからだという説がふたつ目。黒人はファミリーを大事にする(ラトーヤ・ジャクソンの著作などを読まない限りは)。

1970年代のテレビの音楽番組『ソウルトレイン』のテーマソング、『TSOP (The Sound of Philadelphia)』なんかはまさに後者そのもののパーティソング。ちなみにこれを演奏しているフィリーソウルの代名詞的ミュージシャン集団である“MFSB”とはMother Father Sister Brotherの略。訳すと“母父姉兄”。これを歌うスリーディグリーズも「People all over the world! 」とコーラスを付けている。

Lovetrain また同じフィラデルフィアのオージェイズには『Love Train』というヒット曲があるけど(この演奏もMFSB)、これは世界中が手を取り合って、世界に愛の列車を走らせようというディスコナンバー。ファミリーの枠が国境や鉄のカーテンを超えてしまったバージョンだ。

この歌の歌詞にはイングランド、ロシア、中国、エジプト、イスラエルという国家が登場する。1972年ということはベトナム戦争終結前。一次戦略兵器制限交渉の妥結により、米ソの核兵器競争に制限が加えられた。しかし一方ではミュンヘンオリンピックの黒い九月事件や日本赤軍のテルアビブの空港乱射事件が起こり、パレスチナ問題が最悪化していた。

この時期に東西冷戦とパレスチナ問題に対して、みんなファミリーだ仲良くしようぜというお気楽なメッセージを投げつける思想に名前を付けるとするなら、それは“ディスコ”。
でもイスラエルとエジプトが登場するのは、ひょっとしたら旧約聖書の出エジプト記のことを歌っているのかもしれない。出エジプト記と黒人の話は、“黒人と鉄道”というテーマの核心部分でもあるので、また後日のエントリーで触れる。

自動車や飛行機は20世紀に普及した乗り物だが、鉄道は19世紀の乗り物。20世紀には金持ちは車や飛行機に乗り、貧乏人は電車に乗るというライフスタイルがアメリカでは定着した。もちろん黒人の多くは後者。鉄道はお友達。

映画『ロッキー』もフィラデルフィアが舞台だが、まだ貧乏な時代の『ロッキー』と再び貧乏生活に戻る『ロッキー5』ではスラム寸前の街中の高架を列車が走っているシーンが貧しさの象徴として幾度も出てくる。あれは都市部を走るいわゆるライトレールの類で、基本的には貧乏人が乗るもの。ロッキーが金持ちになると乗り物はリムジンとスポーツカーしか出てこなくなる。

鉄道の最盛期はモータリゼーション初期の1920年代で、以後徐々に衰退。石油メジャーが電鉄会社を廃止目的で買い取り、がんがんつぶし、アメリカを自動車社会に塗り替える。1960~70年代には多くの鉄道は国有化され、大幅に縮小。大きく、州をまたがるAmtrakと、フィラデルフィアの都市部を走るようなライトレールのふたつが生き残る。そのほかにニューヨークやシカゴのような大都市の地下鉄網があるが、これはまた別格。

黒人と鉄道の関連でのヒット曲にはグラディス・ナイト&ザ・ピップスの『midnight train to Georgia』もある。こちらは1973年。これはロスで一旗揚げようとして夢破れた男が故郷のジョージアに帰る歌。そもそも飛行機という設定で作られた曲を途中、夜汽車に書き換えたと言うから、ロス発ジョージア行きの夜汽車があるのかどうかはあやしいところ。ないんじゃないだろうか。

ここまでは軽く鉄道をモチーフにした音楽について触れただけだけど、黒人と鉄道の本質的な関係は、黒人の宗教観に鉄道が関わっているという部分。それはまたのちほど。


ソウル・トレイン~70’sディスコ・ヒッツ
オムニバス スリー・ディグリーズ オージェイズ アース・ウィンド&ファイアー マクファーデン&ホワイト・ヘッド ワイルド・チェリー トランプス
ソニーミュージックエンタテインメント (1992/03/01)
売り上げランキング: 44665
裏切り者のテーマ
裏切り者のテーマ
posted with amazlet on 07.05.11
オージェイズ
ソニーミュージックエンタテインメント (1994/01/21)
売り上げランキング: 90817

ベスト・オブ・グラディス・ナイト&ザ・ピップス
グラディス・ナイト&ザ・ピップス
ソニーミュージックエンタテインメント (2001/11/21)
売り上げランキング: 28696

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://www.typepad.com/services/trackback/6a01287743ed7b970c01287743eff1970c

Listed below are links to weblogs that reference 黒人と鉄道 その1:

コメント

侍功夫

南部?中西部の農場を電車に無賃乗車して季節労働をし続ける黒人(映画「グリーンマイル」のジョン・コフィや「サイダーハウスルール」の労働者グループ、ケルアック「路上」にもそういう人がでて来た気がする)あたりも、黒鉄と関係ありそうですね。

gotanda6

なるほど、ケルアックを少し調べてみたら、鉄道関連は結構出てくるようです。黒鉄関連他にもありましたらタレコミよろしくです。

コメントを投稿

著書

about::フリーランス編集者・ライターの速水健朗のブログ。ディスコや歌謡曲などについて。

検索

  • 検索
     

Amazon

 
Powered by TypePad
track feed