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2007年3 月16日 (金)

映画『フラガール』感想 このエントリーをはてなブックマークに追加

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映画『フラガール』のおもしろさについては日記に書いておこうと思ってたんだけど、ちょうどDVDが発売されたのでいいタイミングだ。

舞台は1965年。蒼井優は炭鉱の町で暮らす少女。母(冨司純子)も兄も炭鉱で働いている。しかし、炭鉱会社は炭鉱を縮小し、新たな産業としてリゾートセンター(常磐ハワイアンセンター)の設営を発表する。

1960年代は第一次産業、第二次産業から、第三次産業へと移る産業転換の時代だった。あちこちで同じような事態が起こっていたはず。

しかし冨司純子と兄は炭鉱の仕事を続けるしかない。なにせ三代に渡って炭鉱で生きてきている。一方、妹の蒼井優はフラダンサーに興味を覚え、家出をする。この家から一歩枠を広げると、新しいレジャー施設に就職を求めるものと、炭鉱に残ろうとするものに分かれ、町全体に対立が生まれている。 こういった近代化への推進派と反対派の対立が物語の軸になっている。

実は高度成長の時代に作られた日本映画の多くは、この産業の近代化が背景にある。

例えば、鶴田浩二の現代を舞台にした背広やくざモノのパターンはこんなだ。
冒頭、兄貴分の鶴田が刑務所から出所してくる。しかしかつて隆盛を誇った組は新興の暴力団につぶされかけている。新興の暴力団は地元の土地買収を目論んでいたり、土木事業を独占しようとしたり、資本の力で鶴田の組をつぶそうとする。彼らの背景では大手ゼネコンなんかの資本が手を引いている。その汚いやり口が腹に据えかねた鶴田は、最後に1人で敵のボスと差し違えるために独り組を出て歩き始める。
そのあと、脇の道から察した相棒やら子分やらが出てきたりするお決まりがあって、殴り込みをかけるのがパターン。

1959年から始まった小林旭の渡り鳥シリーズになると、新興の悪徳企業が田舎の土地を買収して一大レジャーランドの建設を企み、地元の住民と悶着を起こしているところに流れ者のアキラが現われるという、フラガールと同じような時代状況が舞台の背景になる。アキラは当然地元住民の側に立ち、敵のギャングたちと闘うのだ。

レジャー・観光産業、第三次産業(やくざも三次産業だけど)というのは、これらの映画では常に敵役だったわけだ。主人公は常に近代化によって消えゆく側の味方をした。

それが『フラガール』では逆転している。主人公・松雪泰子は小林旭同様、流れ者。元SKDのダンサーというエリートながら、母親の借金を背負い、自暴自棄になりながら暮らし、ダンスの教師という職をつかみ、この町に流れてくる。流れ者の主人公として申し分の無いプロフィール。しかし、旭とは逆に近代化する側の助っ人として立ち働く。この設定が映画『フラガール』のおもしろいところだ。

この設定がわかると途端に富司純子というキャスティングが意味を持ってくる。藤純子として60年代の仁侠映画のスターだった彼女は、近代化に抗う主人公のひとりだった(藤の場合は現代モノではなかったけど)。

『フラガール』の終盤、これまで頑固一徹、娘を許さなかった(=近代化に抗ってきた)富司純子が、一所懸命フラを踊る娘の姿を見て以来、“自分のように、穴の中で暮らす生き方ではなく、これからはこういう生き方もありなのかもしれない」と考えを軟化させる。ここで“日陰の花”である緋牡丹博徒がかぶさってくる。

心では許した娘とはいえ、仲直りはできない。これもお竜の心意気。あくまでも消えゆく側として、殴り込みをかける生き方しかできないのが仁侠映画の主人公。『フラガール』の最後で藤はハワイアンセンターのオープンで踊る娘の姿を、こっそり物陰から見る。最後まで日向には出てこないのだ。そしてそれを、宿敵として戦った松雪泰子は理解している。自分の文章を読みながら泣けてきた。テーマとして近代化を描きながら、消えゆくものたちも美しく描いた『フラガール』はよかった。

緋牡丹博徒
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