アップルが広告上手だなんてホントか?
ひと月くらい前に『テレビCM崩壊 マス広告の終焉と動き始めたマーケティング2.0 』という本をトンデモ扱いしたら、おしかりのメールを頂いた。
“トンデモ扱いするのならそれなりの根拠を示せ”と。まったくです。レスポンス遅くなりましたが、オカルト扱いした理由について書きます。
だってあの本では、かつてテレビCMが影響力を持った時代のCMの代表が1984年のスーパーボールでのアップルのマッキントッシュの(リドリー・スコットが撮った)CMで、最近のCMの中の数少ない真似るべきCMがU2のiPodのCMなんだって。
それってただのアップルファンの戯言じゃん。そんなレベルでCMの崩壊なんていってるのかよ。
あのマッキントッシュのスーパーボールで一回だけ流れたCMって伝説化しているけど、ちょっと冷静になると、すごくベタで笑ってしまうような類のものだと思う。マスメディアによる洗脳で奴隷のようになった人々の世界にトレパンの女性がハンマーを持って乱入して、その支配の象徴であるテレビモニターをぶっ壊すというもの(参照)。これって冷静に考えると、デブばっかりのジムにトレパン姿のオリビア・ニュートン・ジョンがやってきてエアロビをさせてみんなイケメンになってしまう『フィジカル』のPVの亜流と捉えることができる(参照)。それ以上の何ものでもない。
iPodのU2というのもオヤジ向けにはわかりやすくていいかも知れないけど、これまたベタ過ぎる。むしろホワイトトラッシュ出身のエミネムの起用のほうがサプライズがあった。
アップルは広告上手といわれるけど、本当にそうか? 最近のラーメンズを起用し、Windowsをこき下ろすあの比較広告もやたらと評判が悪い。
当たり前だ。ここ15年にわたって「人と一緒じゃいやなんだ?」とか「ゴダールとか好きでしょ?」とか「mixiの職業欄に“クリエイター”とか書くタイプでしょ?」とかいわれのない迫害を受けてきながら、なんとかスノッブ色を払拭することに尽力してきた日本のマックユーザーたちの努力を台無しにするCM。おれたちの失なった15年を返してくれ。僕はWindowsユーザーだけど。
あれは元々向こうのCMをそのまま訳しただけだからと言ういいわけも通用しない。サブカル臭の強いお笑い芸人を起用したことが一番の失敗。あそこはテツandトモか猿岩石を起用するべきだった。
アップルのCMは全部比較広告
そもそもアップルの広告はすべて比較広告。IBMがPCの世界に参入した1981年の“ようこそIBM”というのもそうだし、マッキントッシュのスーパーボールのやつも、アップルがいたからG.オーウェルの『1984』の世界にならなかったというIBMへのあてつけ。90年代後半に話題を呼んだアップルの“think different”キャンペーンは、あまり知られていないけどIBMがずっと社訓としてきた“Think”という言葉に対抗したもの。
その後、アップルの仮想敵はマイクロソフトに変わる。カラーiMacのときにローリング・ストーンズの『シーズ・ア・レインボー』をCMソングに使ったのは、マイクロソフトがWindows95のときに『スタート・ミー・アップ』を使ったことへのアンサーなんだろうし、今回のラーメンズのもそう。
最初の頃のシニカルな視点はともかく、どうも今のアップルを広告上手とは素直に認めがたい。スノッブですらなく、卑屈な感じ。アップルのCMをべた褒めしたがる人種ってのは多いけど、かつてのニューエコノミーとか今のWeb2.0とかっていうデジタル時代のオカルトと大差ない気がするよ。いや、リンクはしないけど。

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