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2006年7 月26日 (水)

リゾートポップと沖縄観光キャンペーン このエントリーをはてなブックマークに追加

以前リゾートポップス考その1として書いたものの続き。

渡辺貞夫の『カリフォルニアシャワー』のフュージョンから大瀧詠一の『ロングバケーション』まで、70年代末から80年代のリゾートソングはあまりにも多いので少し趣旨を変え、日本にとってもっとも身近で人気のあるリゾート沖縄。この沖縄の観光キャンペーンとリゾートソングのかかわりに絞ってみる。

まずは沖縄が返還の決定とともに観光化されていく歴史から。

■沖縄をモデルにした観光開発

1969年の日米共同宣言で沖縄の返還が決定すると同時に、沖縄の観光開発を目的とした沖縄海洋博の計画が持ち上がる。この海洋博を機に、沖縄に大手総合商社が進出。そして、大規模なリゾート開発の競争が始まっている。

1964年の観光基本法施行に端を発する、総合商社によるレジャー施設の開発競争がそのまま沖縄に上陸したのだ。 この沖縄観光開発の際にモデルとされたのが、1959年にアメリカの50番目の州として組み込まれたハワイだった。

1959年当時のアメリカでは大ハワイブームが起こっていた。本土から観光客が押し寄せただけでなく、ハワイを舞台にした映画が作られ、ハワイを題材に歌ったポップソングが多数生まれている。

エルビス・プレスリーの映画で主題歌も有名な『BLUE HAWAII』が1962年。ビーチ・ボーイズが『Hawaii』を歌ったのが1963年。こういったポップカルチャーとのタイアップが、ハワイのリゾートのイメージをバックアップし、以後、主要産業を観光とした現在のハワイが誕生した。

こうしたハワイの観光化をモデルに、沖縄も観光立県をめざしたわけだが、具体的にハワイのどこを真似たかというとこんな感じ。

・ハワイアンやフラといった伝統音楽や舞踏に変わる島唄、エイサー、琉舞を発掘した
・ハワイの衣装ムームーにならい、かりゆしウェアを考案
・ハワイに似せるため、亜熱帯植物を植林し、ビーチを整備
・伝統的な食べ物として、ゴーヤーや沖縄そば、紅芋などの食品を特産品としてブランド化

参考資料:沖縄イメージの誕生―青い海のカルチュラル・スタディーズ

さて、1972年に沖縄が返還されると、目論見通り1959年のハワイブーム同様の沖縄ブームが日本本土で巻き起こった。

まずは、沖縄返還の前年にデビューしたのが南国少女のイメージが強い南沙織。ここで注目したいのは、あくまで南国少女のイメージであり、沖縄色は薄かったところ。沖縄色は本土の人間にとって受け入れがたいだろうという売り出し側のイメージ戦略があったのだろう。1972年に吉幾三が山岡英二名義でデビューしているが、東北出身をアピールし、ずーずー弁が歌詞に組み込まれているのとは正反対だ。

それはともかく、南沙織は1971年の年末の紅白歌合戦に出場し、沖縄返還ムードを盛り上げた。さらに、返還後の1973年に沖縄出身のフィンガー5がデビュー。彼らは返還以前にも一度別名でデビューを果していたが、返還をきっかけに再デビューし、時流に乗って大ブレイク。

フィンガー5も、沖縄色はアピールしなかった。むしろ、彼らがブレイクしたのは、60年代に人気を博したモータウンのアイドル、ジャクソン5の日本版としてだった。

■観光キャンペーンと山下達郎

ここまでは観光開発の話だけど、ここからはその後の沖縄観光キャンペーンの話。 1975年に開催された沖縄海洋博は成功とも失敗ともいえないそこそこの成果を上げた。

この海洋博の最大の目的は今後沖縄の主要産業になるはずの観光インフラ作りにあった。日本は戦後インフラの整備のためにイベントを利用してきた。東京オリンピックは首都高と東海道新幹線といった交通インフラ整備につながり、大阪万博は新幹線の増強と国内旅行の需要喚起につながった。その意味では十分成功した。

つまり海洋博そのものの集客よりも、翌年から観光客が来てくれることこそが主な狙いなのだ。 しかし海洋博をピークに1976年以降、沖縄への客足は激減した当初のブームが去ってしまったのだ。しかしこのときに県の団体や観光振興局、広告代理店(電通)による官民合同での観光キャンペーンが計画が始動する。

都市の観光キャンペーンの始まりは1976年のI LOVE N.Y.キャンペーンといわれているが、時代的にみても、沖縄がこれを参考にした可能性もあるだろう。ともかく、 このときの沖縄観光キャンペーンは大手航空会社2社を巻き込み、大掛かりなものとしてスタートした。

日航、全日空は競って沖縄キャンペーンの宣伝を始めた。空とビーチを背景にビキニの女性を撮ったポスターが大量に作られた。もうひとつの核はキャンペーンソングを使ったCM展開だ。 おそらく最初の沖縄キャンペーンソングとなったのは1979年の山下達郎『愛を描いて-Let's Kiss The San-』だ。一般に達郎のブレイクは1980年にマクセルのCMソングとなった『RIDE ON TIME』といわれているので、これはその1年前。その後、達郎は今度はライバルANAの沖縄キャンペーンソングとして『高気圧ガール』(1983)、『踊ろよ、フィッシュ』(1987)を発表している。

今ではリゾートソングといえば山下達郎のイメージがあるが、初期のアルバムには明るいリゾート的イメージは薄い。現在の山下のイメージはこれらの沖縄キャンペーンソングによって書き換えられている部分が少なくないはずだ。また達郎と航空会社といえば、『RIDE ON TIME』がキムタク主演の月9ドラマ『GOOD LUCK!!』(メインスポンサーはANA)の主題歌になったことも加えておきたい。

話をJALの沖縄キャンペーンに戻すと、達郎以降のJALのキャンペーンソングはこんな。

'79『愛を描いて-LET'S KISS THE SUN-』山下達郎
`81『シンデレラサマー』石川優子 
`84『ふたりの愛ランド』チャゲ&石川優子
'85『ふたりの夏物語』杉山清貴&オメガトライブ (これはJALパックCMソング)
'86『風曜日君をつれて』アルフィー 
'87『SAILOR MAN』チャゲ&飛鳥
'88『いつか何処かで (I FEEL THE ECHO)』サザンオールスターズ 
'90『浪漫飛行』米米クラブ 
'92『LOVE SONG』チャゲ&飛鳥 
'94『PARTY TIME』青田典子 

名曲揃い。青田典子は“バブル青田”以前にもソロ活動があったのは知らなかったが。僕がリアルタイムで聞いて記憶に残っているのは『ふたりの愛ランド』~米米クラブあたりまで。この辺がJAL沖縄の黄金時代とかぶっているんじゃないだろうか?

■リゾート法とバブル経済

ふたりの夏物語/サイレンスがいっぱい個人的にはリゾートソングの最高峰だと思っている曲は、リゾートでのひと夏の恋を描いた、杉山清貴&オメガトライブ『ふたりの夏物語』。これは沖縄ではなく、「JALパック」のキャンペーンソングで1985年の曲。

その後の1987年に“総合保養地域整備法”、いわゆるリゾート法が制定される。これに踊らされ、国土の約2割、3割がリゾート地になるといわれたぐらいに、リゾート開発の構想が全国各地で立ち上がることになる。これらがバブル崩壊後どうなったかは周知のごとく。「リゾラバ」なんていう恥ずかしい言葉も生まれた。

爆風スランプが1989年に発表したその名も『リゾ・ラバ』という曲。これも絶対、航空会社とのキャンペーンだろうと思ったら、どういうわけかコスモ石油のCMタイアップだった。よく覚えてないけど。

このリゾートポップの話は、次回はユーミンと西武、達郎と三井不動産という話につなげようと思います。またいつか。

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↑『ふたりの夏物語』と『リゾ・ラバ』が収録されたコンピ。

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↑『高気圧ガール』『踊ろよ、フィッシュ』収録。

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↑『愛を描いて~レッツ・キス・ザ・サン 』収録。

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