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2006年6 月12日 (月)

映画『ハワイアンドリーム』感想 このエントリーをはてなブックマークに追加

Hawaiiandream_2 1987年の映画『ハワイアン・ドリーム』には、バブル時代のカラーが色濃く浮き出ている。たしかに、プールバーやカフェバーといったあの時代の軽薄なアイテムにはまみれている。

音楽は全編50年代のオールディーズ。確かに、バブルの当時はレトロブームの最中でもあったんだっけ。また監督の川島透がこの映画の直前に撮っていたのはチェカーズ主演のアイドル映画『TAN TANたぬき』だったりもするだめ押し感もある。そんな偏見のせいだろうか、あまりこの作品が高く評価されるのをきいたことがなく、いまだDVD化されずにいるが、僕にとってはもっとも好きな映画の中のひとつだ。

舞台はハワイ。ふたりのチンピラ(ジョニー大倉と時任三郎)は日本人観光客にビニールに詰めた白い粉石鹸を、麻薬であるかのように売りつけたりして、気楽に暮らしている。時任が惚れる女(タムリン・トミタ)はニューヨークでダンサーになることを夢見るアジア系移民。そして、イタリア系移民のモランはマフィアを率いてこの島を牛耳ろうとしている。

ハワイは移民たちが暮らす島である。みんな移民としてこの島にやってきた。アメリカが移民で構成されているの国であるのと同様、ハワイも移民の島なのだ。 アメリカがこの島を軍事基地化するために締結した条約の調印が1876年。その前の1852年より中国(清)からの移民を受け入れているし、日本からも1868年に第一次の移民が来航している。ハワイがアメリカ化する以前からここにはアジア系が住んでいるのだ。

アメリカで移民たちがアメリカンドリームを追い求めるように、ハワイでもアジア系の移民たちがさざまざな夢を抱えて生きている。その姿がこの映画の背景であり、「ハワイアンドリーム」というタイトルにつながっている。

この『ハワイアン・ドリーム』は『チ・ン・ピ・ラ』(1984年)という映画の続編でもある。『チ・ン・ピ・ラ』はライトにやくざの世界を楽しむ二人の“半端者”の若者を主人公にした青春映画だ(この映画では、ジョニー大倉の相棒は時任でなく柴田恭兵だった)。

『チ・ン・ピ・ラ』の 舞台は当時、ナウのド真ん中だった80年代前半の渋谷。渋谷でやくざといえば、安藤昇の安藤組なわけだけど、そことこの映画の接点は無い(はず)。むしろセゾングループの都市計画の上に生まれた劇空間都市を舞台とした都会のチンピラ物語だ。主人公の二人は知り合いのやくざを騙して商売をして、最後に追い詰められ、日本のやくざのヒエラルキーを超越した、米軍の軍艦に潜り込み日本を脱出する。痛快冒険活劇。

最後に、追い込まれて窮鼠猫を噛むでドスをさらしに巻いて殴りこみをかけるのが旧来のヤクザ映画のパターンで、破れて死んでいくのが常道。しかし、『チ・ン・ピ・ラ』のエンディングは、まんまと逃げおおせてしまうのだ。ラストに“米軍”の力を借りるというの反則は、まるで野球の試合で9回の裏にマシンガンを持って攻撃するようなもの。基本的には『ハワイアンドリーム』のラストも、これを踏襲したものだ。

ちなみに『チ・ン・ピ・ラ』の脚本家は『竜二』の金子正次である。当然この作品を『竜二』の裏返しとして見ることができるが、そこを説明し出すと長くなるので割愛。知りたい方は下のブログで触れられているのでどうぞ。 ≫ぼうふら漂遊日記::『チ・ン・ピ・ラ』(84年 監督川島透)

で、『ハワイアン・ドリーム』はこの『チ・ン・ピ・ラ』の続編ではあるが、脚本は金子正次ではなく、監督の川島透によるもの。前作が売れて続編ということになったのかもしれない。ちなみに、金子正次は『チ・ン・ピ・ラ』を遺作にこの世を去っている。

そこで川島透が作ったのは極端にセンチメンタルな映画。『ハワイアンドリーム』ではダンサーのタムリン・トミタの夢は儚く散るし、登場人物たちは皆夢が叶うことなく、うらぶれた町で生活を続けるのみだ。それでも、ハワイでの生活は悲壮感はない。海と空だけがどこまでいっても青い。

そんな感傷的で甘美な世界がこの『ハワイアンドリーム』では描かれる。ただし主人公たちはこの夢の楽園を捨てて、海軍の船でまた日本に戻る。青春はもうおしまい。

この映画の主題歌はオールディーズではなく、竹内まりやの『夢の続き』という曲。

昨日と同じ一日が暮れて
彼女は深いため息とともに眠る
果せなかった約束
またひとつ増えただけ
それでも明日を夢見る

映画同様、叶わない夢を見たまま毎日が過ぎていくというモチーフが歌詞になっている。大人の歌だ。

ちなみに、この映画の2年後。ハワイを離れ、日本に舞い戻った時任三郎は、バブル経済の到来と同時に牛若丸三郎太となった。おきらくなヤクザから足を洗い“24時間戦うジャパニーズビジネスマン”に転身した。ジョニー大倉はバンジージャンプしたんだっけ? それでも明日を夢見る。そんな風に生きていきたい。

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