カルチュラル・スタディーズの教科書として読みたい『BE-BOP-HIGH-SCHOOL』、または「日の丸には黒はない」
この国の30代以下の人間は、ビバップという言葉をジャズのジャンルとして知るよりも、ヤンキーマンガのタイトルとして知る。なぜこのヤンキーマンガが『ビー・バップ・ハイスクール』とビバップという黒人文化の中でもコアな文化からタイトルを拝借しているのか? それはもちろん、黒人文化の強い影響下にあるからだ。
長ランやボンタンといった1970年代後半~1980年代前半のツッパリ・ヤンキーといった不良ファッションのルーツは1930年代にギャング系の黒人たちのファッションとして生まれたズート・スーツだろう。
■ズートスーツと不良スタイル
ズートスーツとは、1940年代、第二次大戦直前のアメリカで生まれた派手なスーツの総称です。 フットボール選手のような厚い肩パットを入れ、膝まで届きそうなジャケットに、パンツは極端に太くし、股上は深く、裾は細く絞りこんだスタイルのスーツです。ズートは、ステージ服、バンド服や、個性派の貴方に最適なスーツです! 『キョーエイ服飾』
実際絵を出せばわかるけどズートスーツはこんなだ。
ツッパリ・ヤンキー文化を描いた
『ビーバップ・ハイスクール』の長ラン・ボンタンと並べてみると、これらが一本の線上につながる性質のものであることに気付く。
白人の正装であるスーツをやたら改造して下品にしたのがズートスーツ。
基本的に黒人のギャング文化の正統は、白人にとってのエスタブリッシュメントのアイコンを崩すというものであり、たとえば黒人がキャデラックのような車を改造して車高を下げたり下品な装飾をしたりするのも、キャデラックが高級車であるというのが重要なのだ。 日本のヤンキーが改造する車といえば、ローレルだったりセドリックだったり高級車だったのも、この伝統に基づいていると思われる。日本のヤンキー文化のルーツは黒人ギャング文化だ。
■モッズと黒人文化
一方、ギャング系の黒人たちのファッションは1940年代、1950年代になってもっと細身のスーツに変わっていく。1950年代のニューヨークのジャズクラブでビバップ演奏していた黒人たちはこの細身のスーツがトレードマークで、これを最新のモードとして取り入れたのがジャマイカの黒人たち。ここでルードボーイスタイルが生まれる。
音楽としてのビバップはスカやロックステディへと変化する。 当時のジャマイカはイギリス領。1950年代には宗主国イギリスに労働力として大量に流入する。その黒人たちのスタイルにあこがれた白人たちが細身のスーツを真似るようになってモッズが生まれる。これがざっくりいえば“サブカルチャー”の源流。モッズとは黒人ワナビーのことだ。
日本のヤンキー文化を黒人ワナビー文化の一種としてとらえ、こういうストリートファッションの歴史を辿ってみると、日本のストリートファッションである「ツッパリ」「ヤンキー」とは日本版のモッズのようなものであることがわかる。だから彼らを描いたマンガに“ビバップ”の冠が付けられるのもごくごく当たり前の「ルーツ回帰」でしかない。
ビー・バップのきうちかずひろがこの歴史観を意識して
『ビー・バップ・ハイスクール』という連載を始めたのかどうかは定かではないが。
ビーバップの連載開始は1983年。英国でカルチュラル・スタディーズの一環としてストリート・スタイルとジャマイカ文化の影響が論じられる以前の時代ではあるが、スラングが飛び交う会話劇のスタイルはヒップホップの影響も受け継がれているかもしれない。
■ジャパニーズモッズ文化としてのツッパリ・ヤンキー
英国のモッズがルーツであるジャズやノーザンソウルなどの黒人音楽を好んで聴くように、日本のツッパリ・ヤンキー文化にも黒人音楽を好む傾向がある。
和田アキ子が若い頃は「リズム・アンド・ブルースの女王」だったし、ラッツ&スター(シャネルズ)の鈴木雅之はツッパリ時代からソウルフリークだったようだ。
ただし、このジャンルの最大の牽引役である矢沢永吉がもっとも影響を受けたのはビートルズ。ビートルズも黒人音楽フリークのモッズではあるが、その亜流として分化したロッカーズスタイルの頃のビートルズに影響を受けたのがキャロルであるため、日本のツッパリ・ヤンキー文化の本流はこのロッカーズにあるともいえる。
高度成長から低成長期へに移行した1970年代半ばに生まれ、バブル経済とともに消えていったツッパリ・ヤンキー文化は、オイルショックから田中角栄政権による列島改造にともなう地方の固有性の崩壊を背景に精力を伸ばし、いや、いや全部うそです。
【参考文献】 『SUBCULTURE』 http://web.kyoto-inet.or.jp/people/b-monkey/subculture.html
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あと僕はかけらも読んでないんだけど、こちらもどうぞ。
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