2009年1 月 4日 (日)

2008年に刊行された本ベスト10 このエントリーをはてなブックマークに追加

知り合い、お友だちが出した本は極力外すという方向で、2008年に刊行された本の中から、僕が読んでおもしろかった本ベスト10を紹介。この分野のブロガーは少ない気がするので、あえてカルチャー系、音楽本とか黒人関連とかが優先。他の媒体で取り上げた本も除外しました。

昭和三十年代主義―もう成長しない日本
浅羽 通明
幻冬舎
売り上げランキング: 139146

12月に朝日新聞に寄稿した「地元志向」の原稿を書くに当たり、再度読み直し、この本のおもしろさを再確認した。手前味噌を言うと、「ケータイ小説的。」とテーマはよく似ている。参照している研究も一部かぶっている。消費社会に対する疲弊が生まれていて、それが「地元志向」や「純粋願望」みたいなものになっているという指摘。

ゼロ年代の想像力
ゼロ年代の想像力
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宇野常寛
早川書房
売り上げランキング: 8506

やっぱりこれも「地元志向」の話として読んだ一冊。『昭和三十年代主義』と同じテーマを別の方向から語っている本として並べておきたい。個人的には、浜崎あゆみとケータイ小説が決断主義に入れられてないところに不満が残った。

世界の電波男 ― 喪男の文学史
本田 透
三才ブックス
売り上げランキング: 19265

行数にしてみればたいした量ではないが、あだち充論の部分が秀逸。正直、僕の中にはモテ非モテ問題とか、性愛の問題みたいなものはかなり希薄なので前作の『電波男』はそれほど乗れなかったけど、「世界の~」は、掛け値無しにおもしろかった。文章のおもしろさで言うと、現存の批評家の中でもナンバーワンだと思う。

ZEEBRA自伝 HIP HOP LOVE
ZEEBRA自伝 HIP HOP LOVE
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ZEEBRA
ぴあ
売り上げランキング: 8531

ケーダブ自伝の50倍濃くておもしろい。東京生まれヒップホップ育ちでも、マイケル・シェンカーとマイケル・ジャクソンが同時期に好きで、YMOの影響も受けているという80年代前半の日本のリアル。そして、星新一好きの側面などが書かれている。祖父・横井英樹に「これ読め」と城山三郎を読まされた話と、氷室京介にほめられた話がいい。

友だち地獄―「空気を読む」世代のサバイバル (ちくま新書)
土井 隆義
筑摩書房
売り上げランキング: 4245

高野悦子と南条あやという2人の少女の自殺の比較で社会の変化を示す第二章が特に見事だった。

グ、ア、ム
グ、ア、ム
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本谷有希子
新潮社
売り上げランキング: 69447

地元志向の妹と、自分探しの姉が母を連れてグアム旅行に行くお話。舞台はグアムのショッピングモール、そして、母娘の物語。短編といっていい短い小説だけど、がんがん興味のあるモチーフを突っ込まれていておもしろかった。

ブラックパンサー エモリー・ダグラスの革命アート集 (P-Vine Books) (P-Vine Books)
サム・デュラン
ブルース・インターアクションズ
売り上げランキング: 243033

「左翼思想とはグラフィック・デザインのことである」、と言いたい。大学の新左翼の立て看板、ロシア構成主義、あと都築響一の仕事で、文化大革命をグラフィックで見るという「プラネット・マオ―文化大革命のグラフィック・パワー 」という本も秀逸だった。この本は、P-Vineが出した、米の黒人過激反体制組織ブラックパンサーのアート集。ディスコイラストレーターの江守藹も、エモリー・ダグラスの影響を受けていたのか、とショックを受けた。とかいってもあまり理解されないと思うけど。

ポケットは80年代がいっぱい
香山リカ
バジリコ
売り上げランキング: 156385

枚数で言うと、一冊の分量を満たしていないくらいの本だけど、『遊』や『HEAVEN』界隈の濃密な80年代渋谷界隈な空気が描かれている。若き日の三田格も登場する。

まなざしの地獄
まなざしの地獄
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見田 宗介
河出書房新社
売り上げランキング: 1074

これは復刊もの。永山則夫に関する本を大量に読むと、多くがこれをネタ本にしているので、読まずとも半ば読んだも同然だった。ついに、今年復刊されてオリジナルに触れることができた。

カラオケ秘史―創意工夫の世界革命 (新潮新書)
烏賀陽 弘道
新潮社
売り上げランキング: 103160

タイトルはウソで、初めて書かれる「正史」。ウソがまかり通るカラオケ発明史を、詳細な取材で明らかにした一冊。カラオケボックスがその歴史のはじめからロードサイドビジネスだった話など、消費社会論としても読めた。この著者がカラオケについて本を書いているという話をどこかで目にしたのが、2年以上は前だったはず。長い時間かけてかけて書かれた一冊なんだろう。面識はないですが、裁判がんばって欲しい。

2008年10 月23日 (木)

『紫の青春~恋と喧嘩と特攻服~』感想 このエントリーをはてなブックマークに追加

紫の青春 ~恋と喧嘩と特攻服~
中村 すえこ
ミリオン出版
売り上げランキング: 8651

美談としてフィルターがかかりまくっているケータイ小説と違って、本当に「本当にあった話」である、北関東のレディース連合の2代目総長の自伝。

ヤンキー色ガンガンの表紙やタイトルだけど、若くして登りつめ、一気に転落し、そこからはい上がり幸せをつかむというジェットコースター人生が綴られる中身は、成功体験、人生哲学本として読めるもの。サブカルチャーの棚だけではなく、恋愛・生き方エッセイの棚にも並べてもらえるといいと思う内容。

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2008年8 月21日 (木)

『東京デッドクルージング』東京論としてのノワール小説 このエントリーをはてなブックマークに追加

東京デッドクルージング このミス大賞シリーズ
深町秋生
宝島社
売り上げランキング: 81076

マフィア、ヤクザ、腐敗した警察といった組織犯罪を描き続けるノワール小説の書き手・深町秋生の特徴は、大沢在昌や馳星周といった先行世代のクライム作家たちが舞台として新宿歌舞伎町のような都会を選ぶのと反対に、地方都市、郊外的風景を選ぶところにある。

デビュー作の『果てしなき渇き 』は、16号線沿いのコンビニ強盗から始まっていたし、青春小説の要素が入った2作目の『ヒステリック・サバイバー』は地方都市が舞台だった。『OUT』に代表される桐野夏生の小説が、ノワール系作家の作品よりもリアルに感じられるのは、取材力もあるのだが、彼女が舞台として選ぶ郊外や地方のリアリティーが関係にしているように思う。都会を戯画的に描くのではなく、郊外をリアルに描くのが桐野だとすれば、深町はその線上にいるように思う。なので、その深町の最新作のタイトルが『東京デッドクルージング』とは気にくわないなあと思っていた。

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2008年7 月10日 (木)

『<盗作>の文学史』感想 このエントリーをはてなブックマークに追加

盗作の文学史
盗作の文学史
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栗原裕一郎
新曜社
売り上げランキング: 4760

 当方、「好きな小説家? 大藪春彦と山田風太郎っす!」と答えてはばからない人間なのだけど、この『盗作の文学史』はそんな文学音痴でも、一切斜め読みすることなく読み通した。

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2008年7 月 1日 (火)

『20世紀破天荒セレブ―ありえないほど楽しい女の人生カタログ』感想 このエントリーをはてなブックマークに追加

20世紀破天荒セレブ―ありえないほど楽しい女の人生カタログ
平山 亜佐子
国書刊行会
売り上げランキング: 50404

20世紀に生きた20人の女性の伝記や自伝を濃縮した一冊。

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2008年5 月24日 (土)

生物と無生物と『「謎」の解像度』のあいだ このエントリーをはてなブックマークに追加

「謎」の解像度
「謎」の解像度
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円堂都司昭
光文社
売り上げランキング: 19982

(このエントリーのタイトルはホッテントリメーカーが命名しました。)

あの有名なM君の部屋にはドアがなく、カーテンで仕切られていただけだったという。

宮崎勤は「自閉に失敗」したから事件を起こしたのだ、という「見立て」から始まり、渋谷の「広告都市」化、テーマパーク化など(北田暁大)というような概念を援用し、カラオケ、テレクラ、ウォークマン、シンセサイザーなど「メディア」の変遷を執拗に辿りながら、八〇年代以降の時代環境と綾辻行人の“館シリーズ”を関係性を論じているのが、円堂都司昭の批評家としてのデビュー作で、創元推理評論賞を受賞した「シングル・ルームとテーマパーク――綾辻行人『館』論」。

そして、その円堂の新刊『謎の解像度』は、このスタイル、つまり、新本格ミステリの作家たちの作品を通して、現代の時代環境を論じていくというフォーマットで書かれている(「シングル・ルーム~」も本書に収録されている)。

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2007年11 月28日 (水)

ケータイ小説の「リアル」とは何か? このエントリーをはてなブックマークに追加

恋空〈上〉―切ナイ恋物語

ケータイ小説についてブログで書いてから、もう5ヵ月経った。あれから、とりあえずは『恋空』と『赤い糸』を読んだ(他にも結構読んだ)ので、ちょっと考えたことを小出しにする。

とくに、最近は普段からRSSリーダーに入れているブログでケータイ小説に関するさまざまな議論、論点が出てきていて(「恋愛小説ふいんき語り」も読んだ)、うずうずしてたのでちょっとだけ参加。

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2007年9 月 5日 (水)

『メタボラ』感想 このエントリーをはてなブックマークに追加

本を読むのは遅いほうなのだけど、ほぼ24時間で読了。おもしろかった。

メタボラ
メタボラ
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桐野 夏生
朝日新聞社 (2007/05)
売り上げランキング: 7671

記憶をなくした若者ギンジと、宮古島出身で、親に放り込まれた強制訓練施設から脱走してきたアキンツの出会いから始まる。舞台は沖縄。

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2007年7 月31日 (火)

『ポピュラー音楽と資本主義』 このエントリーをはてなブックマークに追加

昨今の新自由主義的なイデオロギーの浸透のなかで、マルクス主義も批判理論も世の中から消えてしまって、ポピュラー音楽があたかも自由な自己表現の手段であると素朴に信じられている傾向が強まっているようです。

本書の前書きより。

いきなりアドルノがどーたらとかいう本だったら読むのを止めようと思っていたのだけど、この一文で「あーそうかぁ、それって真自由主義のせいなのか」と先制パンチを喰らい、あとは一気に読めた。

ポピュラー音楽と資本主義
毛利 嘉孝
せりか書房 (2007/07/03)
売り上げランキング: 13321

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2007年4 月16日 (月)

iPodは何を変えたのか? もしくは被差別音楽のススメ このエントリーをはてなブックマークに追加

iPodは何を変えたのか?
iPodは何を変えたのか?
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スティーブン・レヴィ 上浦 倫人
ソフトバンク クリエイティブ (2007/03/29)
売り上げランキング: 4142

2001年から始まったiPod、iTunes、iTMSというアップルの音楽業界への参入を追いかけた内容の本だとかいうのはともかく、著者の文章の端々から音楽の趣味というか、スノビズムが漏れ伝わってきて興味深い。

steven levyはコンピュータ系のジャーナリストで1951年生まれのファースト・サマー・オブ・ラブ世代。

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著書

about::フリーランス編集者・ライターの速水健朗のブログ。ディスコや歌謡曲などについて。

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